【英語教育】秦由美子先生にインタビューHada Yumiko
英語教育に情熱を注ぐ秦由美子教授へのインタビューです。
中学校時代の素晴らしい先生との出会いがきっかけで、英語の世界に魅了された秦先生。その後、航空管制官やアメリカ大使館でのキャリアを経て、さらにオックスフォード大学での研究を通じて、英語教育と比較教育に深い関心を寄せられました。現在は、英語の楽しさを学生に伝え、世界に羽ばたく人材を育てるために尽力されています。
秦先生のストーリーから、国際的な視野や学びの楽しさに触れることができるはず!
〜言語を超えて広がる世界〜 英語教育にかける想いと研究への挑戦
英語教育への情熱はどこから生まれたのですか?
英語との出会い
私が英語に興味を持つようになったのは、中学校時代に教えていただいた女性の英語の先生がきっかけでした。その先生は授業もお人柄もとても素晴らしくて、私をとても可愛がってくださいました。おかげで英語が好きになり、先生に褒められたい一心で勉強に励んだ記憶があります。中学校や高校の先生の影響力はとても大きいもので、大学に進んだ後もその影響を強く感じました。
本学では英語と課外授業であるHouse of Styleしか教えておりませんが、それらの授業の中で、英語の面白さを学生の皆さんに伝え、英語を少しでも好きになってもらえれば、と思っています。
大学では、私たちの時代は、英文学が英語英文学科の中で花形のような存在であり、また他の選択肢も少なかったことから、自然と英文学を選択することになりました。当時の自分にとって、英文学は魅力的でしたし、本の中ではありましたが人生への夢を与えてくれました。今でもその道を選んだことに後悔はありません。
英文学の専攻へ
特に好きな英文学の作家としては、ブロンテ姉妹が挙げられます。キーツの詩にも強く惹かれました。また、シェイクスピアの言葉を日常の会話に自然に取り入れることができるようになるほど英語に熟達することは、私にとって一つの目標でした。結果、もっと英語に習熟したいという思いが強まり、英文学科に進むことになったのです。
理系に進んでいたら—
今振り返ってみると、理系に進んでいたらどうだっただろうと考えることもあります。理系で行われる実験や、予期しない発見には大きな魅力があります。1+1が2にならないような、衝撃的な何かが生まれる可能性があるのが理系の面白さだと思います。文系はコツコツと実例を積み上げ、論証を重ねる作業が中心ですが、理系にはそれとは異なる、予想外の発見に出会う楽しさがあるのでは、と思うことがあります。もちろん、どの領域にも多様な困難は付き纏うものなのですが。
留学経験やキャリアの中で感じた国際的な視野とは?
英語を使う職場へ
大学を卒業してから一時、航空管制官の仕事につきました。私を含め、この年が、初の女性管制官4名が誕生した時でもありました。当時は多くの領域で女性のパイオニアが誕生した頃で、後に続く女性のための道を切り拓くことが大切な頃でもありました。
しかしながら、英語をもっと活かせる職場で働きたいという思いが強くなり、アメリカ大使館での仕事に転職しました。その後キャリアを積んで行く中で上司に認められ、ワシントンDCを訪問する機会も訪れました。
日本的思考からの変化と挫折
私が育った環境では、「三尺下がって師の影を踏まず」という言葉に象徴されるように、教師のみならず、男性を立てながら女性は控えめに振舞う、という日本的な価値観が当たり前のものでした。ですので、男女平等思想とは程遠い生活を送っていました。しかし、卒業後関わったアメリカ関係の仕事やアメリカ人の生活を垣間見ることで、男女の平等や人としての自立についての自分の考え方が大きく変わりました。
職場では、当時のマンスフィールド大使に称賛されるなど大きな成果を挙げることができたのですが、日本人の同僚は皆さん年配で、同僚から「若造が生意気だ」というように強く叩かれることがあるなど、年齢やジェンンダーの平等についてアメリカ社会とは大きな格差がありました。ストレスが原因で入院する事もあり、一方大使館からは上司を飛び越える昇進のオファーがあったりして、有難い一方、人間関係のストレスには耐えがたいものがあったため、昇進は別の年配の方に譲り、職を辞する決心をしました。
この経験は私にとっては大きな挫折とも言えるのですが、再び海外で、特にアメリカ人の原点でもあるイギリスで学び直したいという決意を固めることにもなりました。これが、一旦就職し、かなり長い期間(10年ほど)社会人生活を送った後にイギリス留学を決断した理由です。
オックスフォード大学での学びと比較教育への関心
イギリスでは、オックスフォード大学の大学院に進み、イギリスの高等教育に関する研究を通して学位を取得しました。そのまま博士課程を続ける予定でしたが渡航費用が続かず、心残りのまま帰国したことがまるで昨日のことのようです。
当時はサッチャー政権下で大規模な大学改革が行われていた時期で、サッチャーは多くの領域で民営化を押し進めていました。新自由主義を掲げながら、費用対効果の観点から教育を商品とみなし、学生を顧客(customer)と呼ぶような市場主義の中で教育にも効率性を求めていったのでした。改革の渦中にあったイギリスで、数多くの社会改変を肌で感じられたことは幸運ともいえましたし、その後日本でも大学法人化が実施されることになるのですが、日本の大学改革を推進するための必要な情報を十分得る機会にもなりました。
私が教育学部の大学院で初めての日本人留学者だったように、当時のイギリスは日本からの留学が少なく、アジア人に対する蔑視がまだ強く残っていました。それでも、オックスフォードでの様々な経験、すなわち、そこにしかない原書を探して調べたり、一対一での教授指導(テュートリアル)を体験したり、高名な学者の講義を受けたことなどが、その後の私の研究に大きな影響を与えることになりました。卒業後は、幸いにも研究職に就くことができ、オックスフォードを基点に多くの専門家へのインタビューや会議を実施することができ、比較教育学に対する関心がさらに深まることになったのです。
ビューティ&ウェルネス専門職大学で目指す理想の教育とは?
大学での英語教育とリベラルアーツ講座「House of Style」
本学の英語教育では少人数制の授業形態をとっており、学生一人ひとりに十分に目が行き届く環境を整えています。加えて今年から、「House of Style」と名付けた自由参加の特別講座を開講しています。この講座では、学生がエレガンスやマナー、そして英会話を身につけることで、広く世界の人々と交流することを目指しています。このことは本学の理念の一つであり、常に学生が海外に出る機会を視野に入れて指導しています。
昨年度からは、他大学の研究者と共に「女性リーダーの育成」についての研究を実施しており、本学の学生のリーダーシップ形成に役立つ研究となればと思っています。
本学を志望する学生さんへのメッセージ
英語を学ぶことは単に言語を習得することに留まらず、異なる文化を理解し、視野を広く世界に広げることに繋がります。学生の皆さんには、英語を通じて自分の世界を広げ、さまざまな文化や価値観に触れてほしいと願っています。そのためにも、英語を学ぶことの楽しさや英語の多面性、重要性を実感してもらえるように、授業以外でもさまざまな工夫を凝らしていきたいと考えています。
最後に、人として生きる際の指標としているキケロの言葉を贈ります。
“Glory follows virtue as if it were its shadow.”
PROFILE
秦由美子 教授
- 担当科目:英語Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ
- 専門分野:イギリスの高等教育/パブリック・スクール研究/英語教育
- 経歴:オックスフォード大学で修士号(比較教育学),
東京大学で博士号(教育学)を取得。
大阪大学・准教授、広島大学・教授・専攻長。イギリス・サセックス大学(CHEER)研究協力者、オーストラリア・ モナッシュ大学・海外評価担当者(Assessor)。アゴラブ リタニカ(イギリス研究会)、日英欧研究学術交流センター(Re search Institute for Japan, the UK, and Europe:RIJUE)を立ち上げ,RIJUEメンバーと海 外の大学(オックスフォード大学等)と共同研究を実施中。